【Skills of Australian Football】フィールドキッキング

積極的なランニングとシャープなフィールドキッキングが、相手ディフェンスを切り裂き得点チャンスを作り出す。

キッキングは、オーストラリアンフットボールを始めるときに最初に学ぶスキルであると同時に、AFLでプレーすることを望む者にとって最も重要なスキルです。AFLのドラフトで選ばれるためには、チームのベストプレイヤーになる必要はありません。しかし、チームの中で最もキックがうまければ、あなたはチームの中でAFLに最も近いプレイヤーだと言えるでしょう。正確なキックはどのコーチにとっても大事なものです。GWSジャイアンツのディラン・シールは言います。「私たちは、毎日、キック、マーク、ハンドボールなどのベーシックスキルの練習をします。なぜなら、ベーシックスキルが正しくできなければ、フッティーをプレーすることはできないからです。」

ボールを獲得する能力と、ボールをクリーンに処理する能力が、良いプレイヤー、良いチームを決めるのです。特にトップレベルでは、それらの能力のわずかな違いが大きな差になってしまいます。近年ホーソンは、コーチのアラステア・クラークソンと、バイオメカニカルスキルの専門家 デイビッド・ラスの技術援助のもと、素晴らしいフィールドキッキングを使ってポゼッションを維持し、自陣ディフェンスの深い位置から攻撃を仕掛けるという首尾一貫したスタイルで、現代フットボールの先駆者となりました。クラークソンの自信の源は、彼のコーチとしてのキャリアの早い段階で、上質なキックスキルを身に付けることはボールを獲得することと同等だと理解したことにあります。そしてホーソンのプレイヤーは、スキル練習の積み重ねによって、個々のキッキングスキルを大きくレベルアップさせました。

ラスは、キャンベラのAIS(the Australian Institute of Sports)で8年間を過ごし、クラークソンと同じ2005年にホーソンに加入しました。彼のもとでのトレーニングには、柔らかいスクリーンに実際の試合の映像を写し、それに向かってプレイヤーがキックをするというものがあります。それは、ゴルフショップで見られるようなものとは少し異なっており、プレイヤーがどこにキックするのがベストかを瞬時に判断し、それと同時に正確なキック動作に集中できるよう設計されています。そしてラスは、そのキッキングの映像を毎秒200フレームのスロー映像でチェックするなどして、プレイヤーのキッキングテクニックを上達させ、完璧に近づける努力をしました。1999年のブラウンロウメダリスト、ホーソンのシェーン・クロフォードは言います、「(私のキャリアの)早い段階で、ボールを獲得するプレーでは相手を上回っていました。」「(でも、)我々はそのボールをすぐに相手に渡してしまっていました。しかし、クラーコ(クラークソンの愛称)が来てから、たくさんの試合のビデオを見て、どうやって修正するかを分析しました。ホーソンはボールをターンオーバーしたあと、大きく逆サイドへ展開し、相手ディフェンスを切り裂くという方法に至ったのです。」今や、全てのクラブがホーソンのようなキックを目指しています。

キックイン

それほど遠くない昔、キックインでのキッカーの仕事は、ラックマンが待つエリアへ長いボールを蹴りこむこととされてきました。しかし今では、ビハインドはただの1点ではなく、相手に攻撃の機会を与えるプレーとなっており、キッカーは、ロングキック、ショートキック、ビハインドエリアを脱するためのキック、ボールをクリアするためのキックなど、質の高いスキルを持っていなければならなくなっています。
元メルボルンコーチ マーク・ニールドは言います、「キックインプレイヤーは、単にいいキックでなく、素晴らしいキックを蹴れる必要があり、スピードと判断力、さらには信念と勇気がなければなりません。」「多くのクラブはプレイヤーに対し、ボールを持ったらなるべく早くプレーするように指示を出しており、プレイヤーは、相手に競り勝った味方か、なるべく遠くに蹴れるスペースを見つけ、どこに蹴るかをすぐに判断しなければなりません。」

チームは様々なセットプレーに対して最も適したプレイヤーを用意しています。キッカーは、周りに5mほどしかスペースがない味方に対しても、正確にキックするという強い精神力を備える必要があります。正確なキックインを行うためには、オフェンスとディフェンスに分かれたすべてのプレイヤーが練習に参加し、様々な場面に対応できるように練習する必要があります。もしピンポイントのショートキックを使ってエリアを脱出したいのなら、特定のスキルの優れたキッカーを用意する必要があります。もし相手が入念にエリアをコントロールしていると判断したのであれば、なるべく遠くへ低いキックを蹴れるプレイヤーがキッカーになるべきです。もしくは、相手に背の低いウィングマンがいる場合には、センターハーフバックやラックマンをそのエリアに向かわせ、高いボールを蹴ってボールを確保することを試みるべきでしょう。

GWSジャイアンツのディラン・シールは言います、「AFLレベルでのトレーニングを始めるときに最も難しいのは、激しいプレッシャーの中で、自分本来のスキルパフォーマンスをすることです。」「本当にいいキックスキルを持ったプレイヤーが毎年たくさんAFLに入って来ますが、AFLレベルのプレッシャーはとても激しいので、彼らは最初、ジュニアレベルで起こるようなミスキックからスタートします。」「彼らはまずAFLのスピードに適応することに時間をかけますが、それは彼らが必ずしも取り組まなくてはいけないキックのスキルではありません。必要なのはプレッシャーの中でのパフォーマンスです。だから、私たちはトレーニングでは実際の試合のプレッシャーに近づくようにしていますし、コーチは実際の試合で起こる状況でトレーニングできるようドリルをデザインしています。それはすべて、激しいプレッシャーの中でのスキルトレーニングになります。」

「私たちが最も多く練習するのは、ただのフィールドキッキングではなく、プレッシャーの中でのキッキングです。」デーモンズのボールウィナー バーニー・ビンスは言います。「練習を繰り返せば繰り返すだけ上達できると思います。現代のフッティーでは、ボールを保持する能力の重要度が本当に高くなっています。そして、あなたがステップアップするにつれて、あなたがボールを処理するのにかけられる時間は短くなっていくでしょう。当然のことながら、試合にいるほとんどのプレイヤーがキックすることができます、だからこそ、あなたがボールを持ったときの、一瞬の判断にかける時間がより重要になってくるのです。多くの考えがあなたの頭の中を駆け巡り、ボールを処理する方法を判断するのに、おそらく1,2秒はかかるでしょう。だからこそ、そのようなシチュエーションで多くの練習をし、判断のスピードを速くしていく必要があるのです。偉大なプレイヤーは本当に素早く判断し、本当に素早くプレーします。」

セントキルダのショーン・デンプスターも言います。「フィールドキッキングにはスキルトレーニングにかける時間の80%を使ってもいいと思います。私たちが行っているスキルドリルは、たとえレーンワークのような基本的なものでも、複雑なドリルの場合にも、圧倒的にキックを多く使います。セントキルダには大きなジムとバスケットボールコートがあり、いつでもその施設を利用してキックの練習をすることができます。それほどフィールドキッキングを重視しているのです。試合では、正面からプレッシャーを受けるだけでなく、追いかけられながら背後からプレッシャーを受ける場合もあります。そんなとき、あなたはできるだけ早くボールを処理しなければなりません。だから、プレッシャーの中でのプレーの練習を繰り返すことが大事なのです。」

キックをうまく蹴るための最初の重要なカギは“インパクト”です。あなたのキッキングアクションがどんなものであっても、良いキックのポイントは、ボールが当たる足の位置です。これをコーチは“インパクト”と呼びます。キックのインパクトが正しくできれば、次にボールのグリップ、ターゲットへ向かうアプローチ、脚の振り、フォロースルーなどの練習に取り掛かることができます。しかしながら、これら4つのポイントはお互いに関係し合って、または試合のシチュエーションによっても様々にスタイルが変わりますが、“インパクト”の重要性だけは決して変わりません。もしあなたのキックが正しい足の位置でインパクトできていて、ボールがターゲットにしっかりと届いているのであれば、あなたは正しいキックができているということです。その方法で練習していけば、プレッシャーがかかっている時にも、素早くクリーンにボールを処理できるという自信を持つことができるでしょう。

そしてそれはすべてコントロールにつながります。足に正しくインパクトすることは、キックのコントロールにとってとても重要で、チームメイトへの正確なパスにつながるのです。

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